ボケ(Bokeh)の用語起源【写真撮影】The Origin of Bokeh in Photography; Flou (French) vs Bokeh(Japanese)

日本の三文学者たちの、写真のボケ=日本の特殊な感性が生み出した文化という駄文を読んでいるうちに、おかしなカルトが日本に蔓延しているのはおかしいとわかったので、

当記事でもボケの起源を探ります

現在のボケ(Bokeh)とは、写真では、ピントが合っていないところの描写の質という意味で、

ピントが合ってないないところの描写を示す言葉として、日本で使われていたボケ(Bokeh)が、1996年か1997年にイギリスのカメラ雑誌に取り上げられて以来

世界中で使われるようになりました

ニコンが、ボケの質をコトロールする、DCレンズを1991年に売り出した時、Defocus Controlと英語で表現したので(国内ではボケをコントロールする機能として紹介)、

それ以前はボケ(Bokeh)という呼び方は、海外では一般的ではなかったようです。また、ニコンはDefocus Controlなどといういかにも東大和製英語を使って、ボケコントロールを紹介したため、海外では「ピントを外す制御機能付き」と理解した人が多く、まったく意味不明の機能と認知されたりしていましたw(Defocus Blur Controlと書かないと、英語圏の人にはボケコントロールという意味にはならない)

まあ、ボケはDefocusとか、Out of Focusなどといわれましたが、Blurの一種という扱いで、写真においては技術的にまずい要素(ピンボケ、ブレ)の部類のものとされました

そもそも写真が最初に実用化されたフランスでは、Flouと呼ばれ、19世紀のフランス写真界では、英語のBlurと同じように、Flouは、写真家たちの間では、ボケやブレなどの写真撮影や現像時の技術的欠陥を示す用語のように扱われていました まあ、ボケもFlouの要素の一つだったわけです。

ただフランスでは、Flouは、もともと絵画の専門用語で、やさしさや柔らかさを表現する用語で、フランスの画家たちの間では尊ばれた言葉です。英語のBlurやOut of Focusのようにきっちり使い分けられておらず、Flou自体が、やわらかく表現できる手法をすべて含むため、ぼけやブレも、同時に意味するなど、あいまいな使い方であったと Pauline Martin(2010)さんはいいます—-


フランス語のFlouの語源は、ラテン語のfluidus=液体から来ている模様 。 一方の英語のBlurは、二重像、像のダブりとかの、英語の古い単語、あるいは古いドイツ語が起源とか言う人がいます。

まあ、英語のBlurはどっちかというとブレのほうを意味していましたが、Bokeh効果のこともさすことが多かった。


フランス語のFlouは、絵画の特殊用語として、17世紀に登場し、19世紀の終わりまで、絵画の専門用語として使われていた特殊用語でした

André Félibienが、1676年、Flouの定義について

pour exprimer en termes de Peinture, la tendresse et la douceur d’un ouvrage 作品の優しさや柔らかさを絵画で表現すること Expressing the gentleness and softness of a Painting work

(André Félibien, Des principes de l’architecture, de la sculpture, de la peinture, et des autres arts qui en dépendent: avec un dictionnaire des termes propres à chacun de ces arts, Paris, chez Jean-Baptiste Coignard, 1676, p. 596.)*Pauline Martin(2010)

*ouvrage 仕事 、この場合は出来上がった仕事の絵画

そしてそれ以降、Flouは、絵画の世界では、「やさしさと甘さを」表現する用語として使われていました

というわけで、日本のボケ=ピントが合っていないところの描写の質という意味は、フランス語のFlouにも含まれているわけで、ボケは日本の暈け文化から始まった~とかいう、クリエーター世界の寄生動物=学者たちの言うことは、かなりの戯言の可能性がw

というわけで、フランスでは絵画の世界では 甘い世界表現に、Un peu trop flou, ce flou délicieux des peintures

などとして、主に肯定的に使われていましたが、

フランス写真職業協会などは、1840年以降、こうした絵画におけるFlouは、写真においては被写体が鮮明に写らない技術的欠陥の技法であると、徹底して攻撃したので、写真ではFlouは、アマチュア写真家の好む技術的欠陥で、忌み嫌われる要素として長く扱われていました

1851年になると、フランスで創刊されたLa Lumière新聞では、絵画の用語Flou(きつい輪郭線を描かず柔らかく甘く描く手法)を、写真ではまったく違う意味あいでの、印刷やプリントでのシャープさが欠ける(le manque de netteté)といった技術的欠陥を示す専門用語として扱いだしました。F. A. Renard, “Rapport du jury central de l’exposition des produits de l’industrie de 1849”, La Lumière, no 4, 2 mars 1851, p. 44.

というわけで、本来は絵画の甘くやわらかさを表現する高等テクニックの専門用語Flouは、写真関連業界では技術的未熟さを示す、アマチュアカメラマンの好きそうな表現と、絵画と写真でFlouの言葉の立場は正反対となっていきます

まあ、どういうわけでか、今でも風景写真の常識などに残像として残っていますが、「写真は科学的記録手段であることが第一」で、作者の自在な表現手法としての利用は不純で、合成やブレ、ボケは、写真では邪道とされてきた長い歴史があったわけです

フランス語のFlouは、日本語でいうと、ボケとブレを使って、甘く滑らかな表現を得る手法ということで、日本の暈けとある意味通じるところがありましたよね


日本語の「ボケ」は、浮世絵版画の輪郭をにじませる版画の手法の「ぼかし」が起源ともいわれます。

そう、フランスのFlouと同じく、もともとは絵画・特に版画の刷り工程の用語で、輪郭を柔らかく表現するという意味合いが、「ぼかし」にはあって、似通った起源があることがわかります


25 | mai 2010 Français-English

Questions d’esthétique 2512

« Le flou du peintre ne peut être le flou du photographe »

Une notion ambivalente dans la critique photographique française au milieu du XIXe siècle

Le Flou of the Painter Cannot Be le Flou of the Photographer’: An Ambivalent Notion in Mid-Nineteenth-Century French Photography Criticism

Pauline Martin, “« Le flou du peintre ne peut être le flou du photographe »”, Études photographiques, 25 | 2010, 180-209.

https://journals.openedition.org/etudesphotographiques/3060


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